SUS631|析出硬化系ステンレス鋼
ステンレス鋼/JIS G 4303:2021・G 4304:2021・G 4305:2021
原典確認済み 規格値は、日本産業標準調査会(JISC)の規格票閲覧サービスで原典を確認して記載しています(確認日:2026年8月5日)。
SUS631 の収載状況
| 棒(JIS G 4303:2021) | ○ 収載あり |
|---|---|
| 熱延板・帯(JIS G 4304:2021) | ○ 収載あり |
| 冷延板・帯(JIS G 4305:2021) | ○ 収載あり |
出典:JIS G 4303:2021 表1/JIS G 4304:2021 表1/JIS G 4305:2021 表1
化学成分(規格値)
| C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | Cu | N |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 0.09以下 | 1.00以下 | 1.00以下 | 0.040以下 | 0.030以下 | 6.50〜(上限要確認) | 16.00〜(上限要確認) | — | — | — |
その他:Al 0.75〜1.50
出典:JIS G 4304:2021 表3〜表6(熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)/確認日 2026年8月3日。上表は溶鋼分析値、単位は%。「—」は規定がないことを示します。
機械的性質|冷延板・帯(JIS G 4305)
| 状態 | 耐力 Rp0.2 N/mm² | 引張強さ Rm N/mm² | 伸び A % | HBW | HRBW/HRBS | HV |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 固溶化熱処理 | 380以下 | 1030以下 | 20以上 | 192以下 | 92以下(HRBW又はHRBS) | 200以下 |
| RH950 | 1030以上 | 1230以上 | 厚3.0mm超4以上 | — | HRC40以上 | 392以上(HV) |
| TH1050 | 960以上 | 1140以上 | 厚3.0mm以下3以上 | — | HRC35以上 | 345以上(HV) |
出典:JIS G 4305:2021 表14/確認日 2026年8月5日。1 N/mm²=1 MPa。
化学成分(規格値)
| C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | Cu | N |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 0.09以下 | 1.00以下 | 1.00以下 | 0.040以下 | 0.030以下 | 6.50〜7.75 | 16.00〜18.00 | — | — | — |
その他:Al:0.75〜1.50
出典:JIS G 4303:2021 表7(ステンレス鋼棒)/確認日 2026年8月5日。溶鋼分析値、単位は%。「—」は規定がないことを示します。
機械的性質|棒(JIS G 4303)
析出硬化系は熱処理記号ごとに規定値が違います(6.6)。S=固溶化熱処理、H900〜H1150・RH950・TH1050=固溶化熱処理後析出硬化処理です。
| 熱処理 記号 | 耐力 N/mm² | 引張強さ N/mm² | 伸び % | 絞り % | HBW | HRBW/HRBS | HRC | HV |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| S | 380以下 | 1 030以下 | 20以上 | — | 229以下 | 98以下 | — | 241以下 |
| RH950 | 1 030以上 | 1 230以上 | 4以上 | 10以上 | 388以上 | — | 41以上 | 410以上 |
| TH1050 | 960以上 | 1 140以上 | 5以上 | 25以上 | 363以上 | — | 38以上 | 383以上 |
適用寸法(径、対辺距離又は厚さ):75 mm以下
注a) 絞りは、平鋼には適用しない。ただし、注文者の指定がある場合、絞りの規定値は、受渡当事者間の協定による。
注b) 硬さは、いずれかの硬さによる。いずれの硬さを適用するかは、特に指定のない場合、製造業者の選択による。
出典:JIS G 4303:2021 表13/確認日 2026年8月5日。1 N/mm²=1 MPa。
棒には「絞り」の規定があります。板・帯の規格(G4304・G4305)にはない項目で、断面がどれだけ縮むかを示す延性の指標です。ただし注a) に「絞りは、平鋼には適用しない。ただし、注文者の指定がある場合、絞りの規定値は、受渡当事者間の協定による」とあります。丸鋼・角鋼・六角鋼には適用され、平鋼には適用されません。
適用寸法にも上限があります。オーステナイト系は径180 mm以下、それ以外の分類は75 mm以下。これを超える場合は「機械的性質の規定の要否、その規定値及び供試材の種類は、受渡当事者間の協定による」(6.1 a))となります。太物では規格値が自動的には効きません。
出典:JIS G 4303:2021 6.1 a)・表8〜表13 注a)/確認日 2026年8月5日
熱処理の状態を表す記号(表2)
棒には、熱処理の状態を記号で表す規定があります。冷延板(G4305)にはない、G4303 固有の規定です。
| 熱間加工まま | R |
|---|---|
| 焼なまし | A |
| 焼入焼戻し | Q |
| 固溶化熱処理 | S |
| 析出硬化処理 | SUS630=H900、H1025、H1075、H1150/SUS631=RH950、TH1050 |
熱処理の状態を表す記号は、受渡当事者間の合意によって、別途、定めてもよいとされています。
熱間加工まま(R)の棒には機械的性質を適用しません。6.1 b)「熱処理を省略した熱間加工ままの棒については、機械的性質を適用しない」。注文者の要求があれば、JIS G 0404 の 7.6 の B類による供試材に熱処理を行った場合の値を協定してもよい、という構成です。
出典:JIS G 4303:2021 表2・6.1 b)/確認日 2026年8月5日
SUS631 は棒の規格にしかありません
この鋼種は JIS G 4303:2021(ステンレス鋼棒)の表1には収載されていますが、冷延板・帯の JIS G 4305:2021 表1 には収載されていません。したがって「この鋼種の冷延板」というものはJIS上存在しません。
板で近い性質のものが必要な場合は、板の規格に収載されている別の鋼種を選ぶことになります。用途をお知らせいただければ、当社で候補をお調べします。
出典:JIS G 4303:2021 表1/JIS G 4305:2021 表1/確認日 2026年8月5日
冷延板・帯を注文するときの注意点
耐力は、注文者の指定がある場合に適用されます。JIS G 4305:2021 の 6.2〜6.6 の各項に「ただし、耐力は、注文者の指定がある場合に適用する」と明記されています。冷延ステンレスの耐力は、黙っていれば保証される値ではありません。
厚さ0.30 mm未満は引張試験を省略できます。6.1 a) に「ただし、厚さ0.30 mm未満の板及び帯については、引張試験を省略してもよい」とあり、表の欄外にも「耐力、引張強さ及び伸びについては、厚さ0.30 mm以上に適用する」と書かれています。薄板の強度が必要なら、受渡当事者間で取り決めが要ります。
硬さは HBW・HRBW(HRBS)・HV のどれか1つで判定します。注a)「硬さは、いずれかの硬さによる。いずれの硬さを適用するかは、特に指定のない場合、製造業者の選択による」。HRBWとHRBSはどちらでもよいが、疑義が生じた場合はHRBWによる、とされています。注記2で「HRBW及びHRBSは、板厚の薄い場合に適用できないことがある」とも書かれています。
板と帯は記号の末尾で区別します。板であることを示す必要があれば末尾に -CP(例:SUS304-CP)、帯であれば -CS(例:SUS304-CS)を付記します。熱延板(G4304)では -HP/-HS です。
製造方法。箇条4 a)「板及び帯は、冷間圧延後、熱処理を行い、酸洗又はこれに準じる処理を行う」。光輝熱処理を行った場合は酸洗などの処理を省略してもよいとされています。
出典:JIS G 4305:2021 箇条4・6.1・6.2〜6.6・表1注a)b)・表8注a)b)/確認日 2026年8月5日
熱延板の機械的性質(規格値・固溶化熱処理状態)
| 熱処理の種類 | 耐力 N/mm² | 引張強さ N/mm² | 伸び % | 硬さ |
|---|---|---|---|---|
| 固溶化熱処理 | 380以下 | 1 030以下 | 20以上 | 192以下 HBW/92以下 HRBW又はHRBS/200以下 HV |
SUS631 は析出硬化系で、熱処理状態ごとに規格値が変わります。上表は固溶化熱処理状態の値です。このほか析出硬化処理(RH950・TH1050)の状態についても、板厚区分ごとに規格値が定められています。
「固溶化熱処理を行った板及び帯は、通常、析出硬化状態の機械試験を行わないが、特に注文者の要求があれば、供試材に析出硬化処理を行った場合の機械的性質及びその規定値を受渡当事者間で協定してもよい」と規定されています。
発注時は熱処理記号(H900 など)まで指定してください。指定がないと強度が決まりません。
出典:JIS G 4304:2021 6.6・表14/確認日 2026年8月5日
この規格に共通する事項(この鋼種はどの規格で買えるか・析出硬化系は熱処理記号で性質が変わります)は、SUS_PH の分類ページにまとめています。
SUS631 の磁性(参考)
磁性は JIS の規格値ではありません。本ページに掲載した規格値(化学成分・機械的性質)とは異なり、以下は金属組織に由来する一般的な性質の説明です。
SUS631 は、JIS で析出硬化系ステンレス鋼に区分されています。析出硬化系は、熱処理によってマルテンサイト組織を生じさせて硬化させる鋼種です。
時効処理をした状態では磁石に付きます(強磁性)。
種類の区分は JIS 原典(表1)で確認した事実です。磁性についての記述は JIS の規格値ではなく、参考情報です。
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当社の対応
当社が自社設備で加工しているのは SS400(一般構造用圧延鋼材)の厚板ガス切断・溶断です。SUS631 については、協力会社への手配を含めてお見積りを承ります。形状(棒・熱延板・冷延板)と寸法・数量をお知らせください。形状によって適用規格が変わります。
最終更新日:2026年8月17日
