フェライト系ステンレス鋼
ステンレス鋼/JIS G 4303・G 4304・G 4305(2021)/16鋼種を収録
原典確認済み 規格番号・鋼種一覧は、日本産業標準調査会(JISC)の規格票閲覧サービスで原典を確認しています(確認日:2026年8月5日)。個別の鋼種ページには、当該JISで規定されている化学成分、機械的性質、適用条件などを、原典確認済みの範囲で掲載しています。
この区分に属する16鋼種の規格値と、共通する事項をまとめています。
ニッケルをほとんど含まないクロム系のステンレス。磁性があり、熱膨張が小さく応力腐食割れに強い。SUS430が代表。
押さえておきたい点
ステンレスは製品形状ごとに規格が分かれます。棒=JIS G 4303、熱間圧延の板・帯=JIS G 4304、冷間圧延の板・帯=JIS G 4305。「JIS G 4303〜4305」とまとめて書くのは正しくありません。ミルシートに載るのは、実際に納入される形状の規格1つだけです。下表の「収載」は、その鋼種が冷延板(G4305 表1)に載っているかどうかを示します。
フェライト系ステンレス鋼 の磁性(参考)
磁性は JIS の規格値ではありません。本ページに掲載した規格値(化学成分・機械的性質)とは異なり、以下は金属組織に由来する一般的な性質の説明です。
フェライト系ステンレス鋼 は、JIS でフェライト系ステンレス鋼に区分されています。フェライト系は体心立方(bcc)の組織をもち、磁石に付きます(強磁性)。
熱処理や加工の状態にかかわらず磁性を示します。
種類の区分は JIS 原典(表1)で確認した事実です。磁性についての記述は JIS の規格値ではなく、参考情報です。
フェライト系ステンレス鋼 の鋼種一覧
| 鋼種 | 主な成分の目安 | 冷延板(G4305) |
|---|---|---|
| SUS405 | C 0.08以下/Cr 11.50〜14.50 | ○ 収載あり |
| SUS410L | C 0.030以下/Cr 11.00〜13.50 | ○ 収載あり |
| SUS429 | C 0.12以下/Cr 14.00〜16.00 | ○ 収載あり |
| SUS430 | C 0.12以下/Cr 16.00〜18.00 | ○ 収載あり |
| SUS430F | — | - 棒(G4303)のみ |
| SUS430J1L | C 0.025以下/Cr 16.00〜20.00 | ○ 収載あり |
| SUS430LX | C 0.030以下/Cr 16.00〜19.00 | ○ 収載あり |
| SUS434 | C 0.12以下/Cr 16.00〜18.00/Mo 0.75〜1.25 | ○ 収載あり |
| SUS436J1L | C 0.025以下/Cr 17.00〜20.00/Mo 0.40〜0.80 | ○ 収載あり |
| SUS436L | C 0.025以下/Cr 16.00〜19.00/Mo 0.75〜1.50 | ○ 収載あり |
| SUS443J1 | C 0.025以下/Cr 20.00〜23.00 | ○ 収載あり |
| SUS444 | C 0.025以下/Cr 17.00〜20.00/Mo 1.75〜2.50 | ○ 収載あり |
| SUS445J1 | C 0.025以下/Cr 21.00〜24.00/Mo 0.70〜1.50 | ○ 収載あり |
| SUS445J2 | C 0.025以下/Cr 21.00〜24.00/Mo 1.50〜2.50 | ○ 収載あり |
| SUS447J1 | C 0.010以下/Cr 28.50〜32.00/Mo 1.50〜2.50 | ○ 収載あり |
| SUSXM27 | C 0.010以下/Cr 25.00〜27.50/Mo 0.75〜1.50 | ○ 収載あり |
出典:JIS G 4305:2021 表3〜表6/JIS G 4303:2021 表1/確認日 2026年8月5日
この規格に共通する事項
この分類の各鋼種ページに共通する規定の解説です。
この鋼種はどの規格で買えるか
ステンレスは製品形状ごとに規格が分かれます。同じ SUS304 でも、丸棒で買うか熱延板で買うか冷延板で買うかで、適用されるJISが変わります。
| JIS G 4303:2021 | ステンレス鋼棒(丸鋼・角鋼・六角鋼・平鋼) |
|---|---|
| JIS G 4304:2021 | 熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯 |
| JIS G 4305:2021 | 冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯 |
「JIS G 4303〜4305」とまとめて書くのは正しくありません。3規格は収載する鋼種の数も違います(棒65種/冷延板65種/熱延板は別構成)。ミルシートに載るのは、実際に納入される形状の規格1つだけです。
なお G 4303 は「熱間加工したステンレス鋼棒」と限定されており、冷間引抜の磨き棒はこの規格の対象外です。
出典:JIS G 4303:2021 箇条1/JIS G 4304:2021 箇条1/JIS G 4305:2021 箇条1/確認日 2026年8月5日
熱処理の状態を表す記号(表2)
棒には、熱処理の状態を記号で表す規定があります。冷延板(G4305)にはない、G4303 固有の規定です。
| 熱間加工まま | R |
|---|---|
| 焼なまし | A |
| 焼入焼戻し | Q |
| 固溶化熱処理 | S |
| 析出硬化処理 | SUS630=H900、H1025、H1075、H1150/SUS631=RH950、TH1050 |
熱処理の状態を表す記号は、受渡当事者間の合意によって、別途、定めてもよいとされています。
熱間加工まま(R)の棒には機械的性質を適用しません。6.1 b)「熱処理を省略した熱間加工ままの棒については、機械的性質を適用しない」。注文者の要求があれば、JIS G 0404 の 7.6 の B類による供試材に熱処理を行った場合の値を協定してもよい、という構成です。
出典:JIS G 4303:2021 表2・6.1 b)/確認日 2026年8月5日
冷延板・帯を注文するときの注意点
耐力は、注文者の指定がある場合に適用されます。JIS G 4305:2021 の 6.2〜6.6 の各項に「ただし、耐力は、注文者の指定がある場合に適用する」と明記されています。冷延ステンレスの耐力は、黙っていれば保証される値ではありません。
厚さ0.30 mm未満は引張試験を省略できます。6.1 a) に「ただし、厚さ0.30 mm未満の板及び帯については、引張試験を省略してもよい」とあり、表の欄外にも「耐力、引張強さ及び伸びについては、厚さ0.30 mm以上に適用する」と書かれています。薄板の強度が必要なら、受渡当事者間で取り決めが要ります。
硬さは HBW・HRBW(HRBS)・HV のどれか1つで判定します。注a)「硬さは、いずれかの硬さによる。いずれの硬さを適用するかは、特に指定のない場合、製造業者の選択による」。HRBWとHRBSはどちらでもよいが、疑義が生じた場合はHRBWによる、とされています。注記2で「HRBW及びHRBSは、板厚の薄い場合に適用できないことがある」とも書かれています。
板と帯は記号の末尾で区別します。板であることを示す必要があれば末尾に -CP(例:SUS304-CP)、帯であれば -CS(例:SUS304-CS)を付記します。熱延板(G4304)では -HP/-HS です。
製造方法。箇条4 a)「板及び帯は、冷間圧延後、熱処理を行い、酸洗又はこれに準じる処理を行う」。光輝熱処理を行った場合は酸洗などの処理を省略してもよいとされています。
出典:JIS G 4305:2021 箇条4・6.1・6.2〜6.6・表1注a)b)・表8注a)b)/確認日 2026年8月5日
