硬鋼線材
線材・鉄線/JIS G 3506:2024/21鋼種を収録
原典確認済み 規格番号・鋼種一覧は、日本産業標準調査会(JISC)の規格票閲覧サービスで原典を確認しています(確認日:2026年8月5日)。個別の鋼種ページには、原典で確認した規格値を掲載しています。
伸線してピアノ線・オイルテンパー線・PC鋼線などにするための素材です。JIS G 3506 には機械的性質の規定がなく、化学成分と鋼質(脱炭層深さ・結晶粒度・非金属介在物)だけを規定しています。
押さえておきたい点
記号の数字は炭素量のほぼ中央値です(SWRH82=C 0.79〜0.86)。A・Bの違いはマンガンだけで、A=0.30〜0.60%、B=0.60〜0.90%。A・Bに分かれるのは SWRH42 以上の9水準で、SWRH27・32・37 には区別がありません。3種+9水準×2=21種類。
硬鋼線材 の鋼種一覧
| 鋼種 | 分類・規格 | 特徴 |
|---|---|---|
| SWRH27 | C 0.24〜0.31 | A・Bの区別なし |
| SWRH32 | C 0.29〜0.36 | A・Bの区別なし |
| SWRH37 | C 0.34〜0.41 | A・Bの区別なし |
| SWRH42A | C 0.39〜0.46 | Mn 0.30〜0.60(低Mn側) |
| SWRH42B | C 0.39〜0.46 | Mn 0.60〜0.90(高Mn側) |
| SWRH47A | C 0.44〜0.51 | Mn 0.30〜0.60(低Mn側) |
| SWRH47B | C 0.44〜0.51 | Mn 0.60〜0.90(高Mn側) |
| SWRH52A | C 0.49〜0.56 | Mn 0.30〜0.60(低Mn側) |
| SWRH52B | C 0.49〜0.56 | Mn 0.60〜0.90(高Mn側) |
| SWRH57A | C 0.54〜0.61 | Mn 0.30〜0.60(低Mn側) |
| SWRH57B | C 0.54〜0.61 | Mn 0.60〜0.90(高Mn側) |
| SWRH62A | C 0.59〜0.66 | Mn 0.30〜0.60(低Mn側) |
| SWRH62B | C 0.59〜0.66 | Mn 0.60〜0.90(高Mn側) |
| SWRH67A | C 0.64〜0.71 | Mn 0.30〜0.60(低Mn側) |
| SWRH67B | C 0.64〜0.71 | Mn 0.60〜0.90(高Mn側) |
| SWRH72A | C 0.69〜0.76 | Mn 0.30〜0.60(低Mn側) |
| SWRH72B | C 0.69〜0.76 | Mn 0.60〜0.90(高Mn側) |
| SWRH77A | C 0.74〜0.81 | Mn 0.30〜0.60(低Mn側) |
| SWRH77B | C 0.74〜0.81 | Mn 0.60〜0.90(高Mn側) |
| SWRH82A | C 0.79〜0.86 | Mn 0.30〜0.60(低Mn側) |
| SWRH82B | C 0.79〜0.86 | Mn 0.60〜0.90(高Mn側) |
※ この規格は機械的性質を規定していません。調質・焼入焼戻し後の強度や硬さは、熱処理条件およびメーカーの仕様によって異なります。数値が必要な場合は、ミルシートまたはメーカー資料をご確認ください。
この規格に共通する事項
この分類の各鋼種ページに共通する規定の解説です。
鋼質(箇条7)
軟鋼線材(G3505)にはない、硬鋼線材だけの規定です。
| 脱炭層深さ | 平均全脱炭層深さ 0.20 mm 以下(協定により JA.2 を適用してもよい) |
|---|---|
| オーステナイト結晶粒度 非金属介在物 | 注文者が指定してもよい。規定値は受渡当事者間の協定による。 |
脱炭層は伸線時の断線や、ばねの疲労寿命に直結します。硬鋼線材でこれが規定されているのは、高強度の線に伸ばして使うことが前提だからです。
出典:JIS G 3506:2024 箇条7
21種類の構成とA・Bの意味
硬鋼線材は21種類です。SWRH42以上の9水準にはA・Bの区別があります。
| A・Bなし(3種) | SWRH27、SWRH32、SWRH37 |
|---|---|
| A・Bあり(9水準18種) | SWRH42A/B、47A/B、52A/B、57A/B、62A/B、67A/B、72A/B、77A/B、82A/B |
A・Bの違いはマンガンだけです。炭素・けい素・りん・硫黄は同一で、A=Mn 0.30〜0.60%、B=Mn 0.60〜0.90%。9水準すべてでこの関係が成り立ちます。A・Bは強度の等級ではありません。
記号の数字は炭素量のほぼ中央値です。SWRH27 は C 0.24〜0.31(中央 0.275)、SWRH82 は 0.79〜0.86(中央 0.825)。炭素範囲の幅は21種類すべて 0.07% に統一されています。
出典:JIS G 3506:2024 表1・表2/確認日 2026年8月5日
軟鋼線材(SWRM)との違い
| 硬鋼線材 SWRH | 軟鋼線材 SWRM | |
|---|---|---|
| 規格 | JIS G 3506:2024 | JIS G 3505:2024 |
| 規定元素 | C・Si・Mn・P・S の5元素 | C・Mn・P・S の4元素(Siなし) |
| P・S の上限 | 0.030% 以下 | 0.040% 以下 |
| 製造方法 | キルド鋼のみ | キルド鋼又はリムド相当鋼 |
| 標準径 | 5.5〜15 mm(13種) | 5.5〜19 mm(16種) |
| 主な行き先 | 硬鋼線(SW)・ピアノ線(SWP) | 鉄線(SWM)・くぎ・金網 |
硬鋼線材のほうが不純物管理が厳しく、けい素の規定が加わります。いずれも「線材」であって「線」ではない点に注意してください。
出典:JIS G 3506:2024/JIS G 3505:2024
附属書JA(特別品質規定)
受渡当事者間の協定によって、炭素(C)の含有率を表2の上限・下限をそれぞれ 0.01% ずつ狭めた範囲で指定できます。
例:SWRH27 の場合、炭素の含有率は 0.25%〜0.30% となります(表2は 0.24〜0.31%)。
出典:JIS G 3506:2024 附属書JA JA.1
鋼質(箇条7)
機械的性質の代わりに、SWRHには 箇条7「鋼質」という独自の規定があります。軟鋼線材(SWRM)にはない項目です。
| 7.1 脱炭層深さ | 平均全脱炭層深さ 0.20 mm以下(受渡当事者間の協定によってJA.2を適用してもよい) |
|---|---|
| 7.2 オーステナイト結晶粒度 及び非金属介在物 | 規定あり |
脱炭層は伸線後の疲労強度に直接効くため、硬鋼線材ではこれを規格値として押さえています。
出典:JIS G 3506:2024 7.1・7.2/確認日 2026年8月5日
21種類の構成とA・Bの意味
A・Bの違いはマンガンだけです。例えば SWRH42A と SWRH42B は、炭素・けい素・りん・硫黄がすべて同一で、マンガンだけが A=0.30〜0.60%、B=0.60〜0.90% と違います。9つのA・B対すべてでこの関係が成り立ちます。
A・Bに分かれるのは SWRH42 以上の9水準(42・47・52・57・62・67・72・77・82)です。低炭素側の SWRH27・32・37 にはA・Bの区別がなく、Mn 0.30〜0.60 の1本だけです。3種類+9水準×2=合計21種類になります。
記号の数字は炭素量のほぼ中央値です。SWRH27=C 0.24〜0.31(中央0.275)、SWRH82=C 0.79〜0.86(中央0.825)。数字×0.01がおおよその炭素量で、炭素範囲の幅は全21種類で0.07%に統一されています。
出典:JIS G 3506:2024 表1・表2/確認日 2026年8月5日
軟鋼線材(SWRM)との違い
| 硬鋼線材 SWRH | 軟鋼線材 SWRM | |
|---|---|---|
| 規定元素 | C・Si・Mn・P・S の5元素 | C・Mn・P・S の4元素(Siなし) |
| P・S の上限 | 0.030%以下 | 0.040%以下 |
| 標準径 | 5.5〜15 mm(13種) | 5.5〜19 mm(16種) |
| 製造方法 | キルド鋼に限定 | キルド鋼又はリムド相当鋼 |
| ボロン添加 | 例外規定なし | 協定によって添加可(JA.3) |
硬鋼線材のほうが不純物管理が厳しく、Si 0.15〜0.35 が全21種類共通で規定されます。径の許容差も、SWRMは25 mmまで表があるのに対し、SWRHは15 mm超が協定になります。
出典:JIS G 3506:2024 表2・表3・表4・箇条5/JIS G 3505:2024 同項目/確認日 2026年8月5日
附属書JA(特別品質規定)
JA.1 炭素の含有率:受渡当事者間の協定によって、表2の上限・下限をそれぞれ0.01%ずつ狭めた範囲を指定してもよい(例:SWRH27 なら 0.25〜0.30%)。
表2に記載のない合金元素は、意図的に添加してはなりません。SWRM(G3505)と違い、ボロン添加の例外規定はありません。
注文時に提示すべき情報は、箇条14で a) 種類の記号 b) 径 の2項目だけです(SWRMは4項目)。
出典:JIS G 3506:2024 附属書JA・表2欄外・箇条14/確認日 2026年8月5日
